食事を始めるときには、手を合わせていただきます。
食べ終わったときには、手を合わせてごちそうさまでした。
このような所作は、日本人であれば誰もが自然と身につけている、日本での食事における基本的なマナーです。
同じように中国にも食事をする際に守るべきマナーがあるのですが、その内容は日本人が慣れ親しんだ日本の食事マナーとは全く違った内容となっています。
例えば、日本人が蕎麦やうどんなどの麺類を食べるとき、麺をすするようにして音を立てて食べるのは当たり前のことです。
しかし、中国では麺類を食べるとき、レンゲを使って音を立てずに食べることが正しいマナーとして認識されています。
このように、中国には日本の食事マナーとは異なる、中国独自の食事マナーがいくつも存在しています。
つまり、日本人が当然とする日本での食事マナーは、中国ではかえって周囲の人を不快にさせてしまう可能性があるということです。
この記事は、中国の食事マナーがテーマ。
あなたが中国を訪れたときや中国の人達と一緒に食卓を囲むとき、みんなで気持ちよく食事を楽しむためにも、この記事を参考に中国の食事マナーを学んでおいてはいかがでしょうか。
中国料理を食べるときに守るべき基本マナーとは?
出された料理は完食しない
中国料理は基本的に料理が大皿に盛り付けられた状態で提供されますが、大皿に盛り付けられた料理をきれいに完食してしまうことは、正しいマナーではありません。
日本では、提供された料理はきれいに食べることこそ、料理を提供してくれた方への感謝の気持ちを表す配慮となります。
しかし、中国では提供された大皿料理を完食せず、少し残すことがマナー。
「美味しい料理を食べきれないほど提供してくれてありがとう。」
料理を少し残すことで、このような感謝の気持ちを伝えることができると考えられています。
取り皿に取り分けた料理はきちんといただくことがマナー
みんなで取り分けて食べる大皿料理は、完食せずに少し残すことがマナーですが、自分が食べるために小皿に取り分けた料理は、きちんといただくようにしましょう。
主賓から食事を始める
中国の食卓では、食事を始める前に手を合わせていただきます、といった日本のような習慣はありません。
食卓を囲んでいる人達の中で、一番目上にあたる主賓が食事を始めることが、他の人達が食事を開始する合図となります。
例えば、祖父母、父母、子供がいる場合であれば、最年長者である祖父母から食事を始めます。
続いてお父さんやお母さんが食事を始めて、最後に子供が食事を始めるという流れです。
このように、中国の食卓においては、食べる順番を守るということがマナーになります。
食卓を囲む人達の中での自分の立場を把握しておくことが大切です。
その場の主賓は誰なのかを考えよう
結婚式や誕生日会など、若者がその場の主役となる場合があります。
そのような場面では、その場の主役である若者が主賓となるため、必ずしも年齢順に食事を始めるということではありません。
その場の主賓が誰にあたるのかを考えるようにしましょう。
料理の盛り付けをできるだけ崩さずに取り分ける
中国ではほとんどの料理が大皿料理として提供されることが一般的です。
そのため、大皿料理を各自で小皿に取り分けて食べることになります。
当然、自分以外の人も大皿料理を食べますから、自分が料理を取り分ける際には、大皿料理の盛り付けが美しい状態を保てるように、料理を少しずつ取り分けるようにすることが大切です。
みんなが気持ちよく食事できるように、他の人のことも考えて料理を取り分けることが中国の食事マナーになります。
料理ごとに新しい取り皿を使う
用意された料理を取り分けるとき、複数の料理を同じ小皿に取り分けてはいけません。
料理の味が混ざることのないよう、料理ごとに新しい小皿を使うことが正しいマナーになります。
食事の後に食器を洗う人のことを考えると、何枚もの取り皿を使うことに抵抗を感じる人もおられると思いますが、中国では何枚もの新しい取り皿を使うことは全く問題ありません。
料理ごとに遠慮なく新しい取り皿を使いましょう。
麺類やスープ類を食べるときは音を立てない
日本人はラーメンや蕎麦などの麺類を食べるとき、麺をすするようにして食べますが、中国では麺類やスープ類は音を立てずに食べることがマナーとされています。
麺類を食べる際には麺をすすって食べるのではなく、麺を口に入れる前に一旦麺をレンゲで受けて、極力音を立てずに食べることが重要です。
音を立てて食べることに関しては、厳しい目で見られることが多いため、特に気をつけるようにしましょう。
お皿に口をつけて食べてはいけない
日本ではうどんやラーメンのスープを飲むとき、器に口をつけることがありますが、中国では器に口をつけて食べることはマナー違反です。
中国料理を食べるときは、基本的に器を持ち上げることはせず、卓上に置いた状態で食事をします。
そのため、スープを飲む場合でも、器を持ち上げながら口につけて飲むのではなく、レンゲを使って一口ずつ飲むようにしましょう。
食べ終えた骨や殻はお皿に乗せてはいけない
日本では魚の骨をお皿の端に置くことがありますが、中国ではお皿に骨や殻を置いてはいけません。
骨や殻はゴミとして強く認識されているため、お皿の上に置くのではなく卓上に置くことが正しいマナーです。
中国料理店では、お客様が帰られた後にテーブルクロスを交換することが一般的なため、卓上が汚れてしまうことは気にしなくて構いません。
直箸は正しいマナーとして認識されている
日本では、自分が使っているお箸で他人に料理を取り分ける行為はマナー違反とされますが、中国では、直箸は親愛の証として捉えられています。
直箸のマナーは日本と中国では真逆の内容なので、注意するようにしましょう。
自分が食べる料理は自分で取り分ける
日本の食卓やパーティーなどでは、他の人が食べる料理を取り分けて差し上げる行為はよく見かける光景です。
しかし、中国料理においては、自分が食べる料理は自分で取り分けるというのがマナー。
中国では各自で料理を取り分けることが自然なので、日本のパーティーのように気を遣わなくても問題ありません。
お箸の置き方には意味がある
中国料理において、お箸の置く向きには意味があります。
- タテ向きに置く:食事中
- ヨコ向きに置く:これ以上食べない
食事中に食事が終わったと勘違いされないためにも、お箸の置き方には注意を払うようにしましょう。
円卓で食事をするときに注意すべき中国の食事マナーとは?
中国料理店では回転台のついた円卓で食事をすることが多いですが、円卓で食事をする際にも守るべきマナーが存在しています。
円卓で食事をする場合には、回転台の回す方向や席次などに決まりがあるため、この機会に円卓のマナーを覚えておきましょう。
ここからは、円卓での食事マナーをいくつかご紹介します。
回転台は時計回りに回す
回転台は、どの方向に回しても良いのではありません。
必ず右回りに回すようにしましょう。
席次の決まりがある
円卓で食事をする際には、テーブルマナーとして決められた席次があるため、目上の人には上座に座ってもらう必要があります。
上座とは出入口から一番遠い席のことを指し、下座とは出入口から一番近い席のことを指します。
【円卓における席次】
料理を食べ始める際も、上座の人から順番に料理を取り分けていきます。
円卓での食事で戸惑ってしまわないように、あらかじめ席次を覚えておきましょう。
また、自分が接待をする立場の場合では、必ず下座に座り、下座からみんなの注文を店員さんに伝えるなどすると良いでしょう。
回転台に倒れやすい物は置かない
円卓の回転台は、円卓を囲んでいる全ての人達の共有スペースで、料理、お茶、調味料など、みんなが共有して使うもののみを置きます。
そのため、使用済みの小皿やお箸などを回転台に置くことは禁止です。
倒れやすいビール瓶やグラスなどを置くこともやめましょう。
回転台の料理にビール瓶が倒れてしまっては、折角の食事が台無しです。
回転台の料理は持ち上げない
回転台に用意された大皿料理を小皿に取り分ける際には、大皿料理を持ち上げたり小皿を持ち上げたりしてはいけません。
回転台を使って料理を自分の前に用意し、取り皿は卓上に置いた状態で料理を取り分けるようにしましょう。
立ち上がって料理を取り分けない
円卓で食事をする際に、立ち上がって料理を取り分けることはマナー違反となります。
円卓に回転台が設置されている理由は、円卓を囲む人達全員が、自分達の手で気軽に料理を取り分けられるようにするためです。
遠くにある料理を取り分けたいときは、立って遠くの料理に手を伸ばすのではなく、必ず回転台を使って、食べたい料理を正面に持ってきてから取り分けるようにしましょう。
中国料理のフルコースの流れと注意すべきマナーを紹介
ここからは、中国料理店でコース料理を食べるときに注意すべきマナーをご紹介します。
そのためにも、まず中国料理のフルコースの全容を把握しておきましょう。
中国料理のフルコースの基本的な流れ
- 前菜
- スープ
- 主菜
- 主食
- 点心
それでは、各項目ごとに詳しくみていきましょう。
前菜
中国のコース料理では、まず最初に前菜が提供されます。
中国料理の前菜のメニュー例
- 棒棒鶏 (バンバンジー)
- 焼き豚
- きくらげの和え物 など
これらの前菜は一品ずつ提供されるのではなく、いくつかの冷製料理が大皿に盛り付けられた状態で提供されることが一般的です。
前菜を取り分けるときには、好きな料理だけをたくさん取り分けてはいけません。
盛り付けられている数種類の料理を少しずつ均等に取り分けるようにしましょう。
スープ
前菜が終われば、次はスープ料理です。
中国のスープ料理は高級な食材を使用した料理が多く、フカヒレスープ、ツバメの巣のスープ、アワビのスープなどが有名です。
他の料理と同様に、スープ料理も大きな鍋に入れられた状態で提供されることが多いため、卓上にスープが用意されたら、自分で取り分けるようにしましょう。
主菜
スープを食べ終えたら、お肉や魚、野菜をメインとした主菜が提供されます。
主菜として提供される料理は1品ではなく、3品から5品程度の複数の料理が用意されることが一般的です。
主菜は色々なメイン料理を楽しめるように、炒め物、揚げ物、あんかけ、蒸し料理など、調理方法の異なる多彩な料理が用意されます。
代表的な料理には、北京ダック、青椒肉絲、上海蟹の姿蒸し、エビチリ、酢豚、フカヒレの姿煮など、お肉や海鮮などをふんだんに使用した豪華な料理が多いことが特徴です。
フィンガーボウルをご存じですか?
骨や殻が出る料理を食べるときには手が汚れることがありますが、中国料理では食事中に手の汚れを落とすことができるように、フィンガーボウルという手を洗うためのボウルが用意されることが一般的です。
フィンガーボウルには汚れを落とすための水が入っており、食事中に手を洗うことができます。
お店によっては、油を落としやすくするためにお茶が入っていることがありますので、飲み物が運ばれてきたと勘違いして飲まないように気をつけましょう。
主食
主菜を食べ終えたら、次は主食が運ばれます。
主食には、炒飯、焼きそば、ちまき、担々麺など、ご飯ものや麺類といった炭水化物を摂れる料理が提供されることが一般的です。
主食の料理も大皿で提供されるため、小皿に取り分けていただきましょう。
点心
メイン料理を食べ終えたら、最後に点心をいただきましょう。
食後に食べる点心には、杏仁豆腐やゴマ団子などの甘いデザートのほか、餃子、焼売、中華まんなど、つまんで食べることができる軽食のような料理が用意されます。
お茶の飲み方にもマナーがあった!?
中国料理店では、みんなで共有してお茶を飲めるよう、中国茶の入った急須が回転台の上に用意されることが多いです。
しかし、お店によっては中国茶の入ったポットを用意したり、蓋がついた茶碗に中国茶を入れて各々に提供したりと、中国茶の提供の仕方は様々です。
急須やポットのお茶を飲むとき
中国茶が急須やポットで提供されたときは、みんなが共有して飲むものとして回転台の上に置かれます。
まだみんなにお茶がいきわたっていない場面では、他の人の分がなくなってしまわないように注意しましょう。
中身がなくなってお茶のおかわりが欲しい場合は、急須やポットの蓋をずらしておくことで、店員の方にお茶がなくなったことを知らせることができます。
茶碗のお茶を飲むとき
お店によっては、蓋のついた茶碗でお茶が提供されることがありますが、茶碗の中のお茶には茶葉も入っていることが一般的です。
そのまま飲んでしまうと茶葉まで口に入ってしまうため、蓋を外して飲むのではなく、茶葉を飲んでしまわないように、少し蓋をずらして飲むようにしましょう。
また、茶碗の蓋を少しずらして置いておくことで、おかわりが欲しいという合図を店員さんに送ることができます。
卓上をトントンと叩くことはありがとうのサイン
中国では和気あいあいとおしゃべりをしながら食事をすることが文化です。
食事中に楽しく喋ることも大切なこととして捉えられているため、店員さんがお茶を注ぎにきてくれたとしても、いちいちお礼を言って話を中断させることはしません。
卓上をトントンと軽くノックすることで、ありがとうという気持ちを表します。
まとめ
以上、今回は様々な中国の食事マナーをご紹介いたしました。
日本と中国では、当然とする食文化が全く異なることがお分かりいただけたと思います。
日本と中国の食事マナーを状況に応じて使い分けることができれば、より食事が楽しくなるに違いありません。
中国の人と食事をする機会がある方は、今回ご紹介した食事マナーを実践してみましょう。